
拉致問題を考えるとき、無意識の内に私たちが袋小路に追い込まれていることを自覚しなければならない。「正常性バイアス」という言葉がある。異常な刺激に対して、慌てないように抑制して対応することを指すのだが、異常なことなのに異常だと思わないことで、精神の安定を保とうという働きをしてしまうことになる。9,17の衝撃はもう3年半前の出来事で、怒りも衝撃も薄れてきたと考えがちだが、そうではなく、北朝鮮からのメッセージがどれだけ異常なものでも、それが繰り返されると、正常なものであって欲しいと思う気持ちが働くから、衝撃も怒りも薄れたように感じられるのかも知れない。
正常であって欲しいという「正常性バイアス」が、物事の判断を狂わすことがあるのだ。環境問題に置き換えれば、分かりやすい。珊瑚礁の一部が白色化してきても、ヒトデが増えてきても、ごみが流れ着いても、この海は大丈夫だろうと思ってしまうことと同じなのだ。すなわち、私たちは、1月後半の日朝協議でも、贋遺骨を返せとか同じことを繰り返す北朝鮮に対し、「正常性バイアス」を排除しなければならない。
だから、北朝鮮が「日朝包括協議、日本は『不誠実』と初論評」と言ったという
滑稽なニュースが報じられても、滑稽だと思わず、異常な事態だと思い続けなければならない。
北朝鮮:日朝包括協議、日本は「不誠実」と初論評
【北京・西岡省二】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は20日、今月上旬の日朝包括並行協議に関する初めての論評を発表し、「3年ぶりに再開した今回の政府間会談が、再び突破口を開けない状態で幕を下ろしたのは、全面的に日本の不誠実な立場のためである」と批判した。
また、安倍晋三官房長官らが北朝鮮への圧力や制裁に言及していることに触れ、「過去の清算を回避し、政治的人気を高めようとする極右保守勢力の卑劣な本心だ」と非難した。
毎日新聞 2006年2月20日 19時45分 (最終更新時間 2月20日 20時40分)
これは、明らかに安倍官房長官や麻生外務大臣が、何度か制裁を匂わす発言を続けているから出てきた反応なのだ。
2月19日、家族会、救う会は幹事会を開き、
幾つかの新しい姿勢を見せてくれた。
「国交正常化交渉が開かれたが、結局、拉致問題にまったく進展がなかった。制裁ということも持ち上がってきているので、今年は何か動く可能性も出てきた」と横田滋さんが述べたのだが、昨年末に緊急入院をし、生死の境を彷徨った横田滋さんだからこそ、正常性バイアスを避けて発言できた内容なのかも知れない。
よど号犯の妻を
よど号妻の告訴は24日に 国際社会への働き掛け強化
北朝鮮による拉致被害者家族会と支援団体「救う会」は19日、東京都内で会合を開き、被害者の早期救出を訴えるため、国連など国際社会への働き掛けを強化するほか、6月までに東京都内で大規模な集会を開催することを決めた。
拉致被害者、松木薫さんの親族によるよど号ハイジャック事件メンバーの妻2人の告訴は、24日に警視庁に対し行う予定で、容疑の罪名などを最終調整していることを明らかにした。
救う会によると、4月に家族会や救う会のメンバーが訪米し、国連や米国議会関係者に解決に向けた協力を要請する。また5月にノルウェーで開催予定の北朝鮮の人権問題に関する国際会議にも参加の予定という。(共同)(02/19 18:43)
http://www.sankei.co.jp/news/060219/sha050.htm
手付かずだった「よど号ルート」の拉致について、家族会・救う会が能動的に動くのは賛成だし手助けしたいが、そもそも、これまで帰国した「よど号妻」に対し、わが国は旅券法違反という微罪でしか取調べできない欠陥を抱えていることが問題なのだ。スパイ防止法もないから、まともな取調べもできない現状は、先日の自衛隊の地対空ミサイルの機密漏洩に関わった三菱電機や三菱総研や、支那へのヘリコプター輸出で取調べを受けているヤマハ発動機が、やすやすと敵の工作機関にやられることに繋がっている。

この件の正常性バイアスを排するには、憲法9条という呪縛を取っ払って考えれば、新しい視界が開けてくる。そういう意味で、今週の金曜日、2月24日に
戦略情報研究所が開催する、
「自衛隊による拉致被害者救出のシミュレーション」という佐藤守氏の講演会は、素晴らしい企画なのである。この61年間、日本人が忘れていた、いや、忘れさせられていた(奪われていた)軍事オプションの存在を、初めて私たちは視野に入れることが可能になるからだ。
これまで荒木和博氏は何度も言及しているし、私自身も何度も書いて来たことで、憲法9条の呪縛があっても個別的自衛権を行使すればいいので、軍事力による拉致被害者奪還作戦を真剣に検討する時期はとっくに来ているはずだったのだ。つまり、これも、拉致問題の正常性バイアスを破壊できる方法論だ。軍事オプションを検討するだけで、新しいツールになる。
※右サイドバーのテレビ画面の3番目に、昨年11月18日に行われた皇室典範改悪阻止の集会の模様を加えました。
拙著、
「『反日』の超克」(PHP研究所)が3月1日に発売されます。昨年11月に発売される予定でしたが、色々な理由で発売が延期になったことをお詫びします。まだ、アマゾンなどではタイトルが修正されていませんが、予約販売をしていますのでよろしくお願いします。内容は追って。
posted by Nishimura at 23:59
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