今年5月に北朝鮮を訪問していたのは朝鮮総連幹部のB氏。北朝鮮への現在の制裁措置は、北朝鮮の全船舶の入港禁止、北朝鮮の対日輸出全面禁止、北朝鮮国民の日本入国原則禁止を主たる内容としている。
中でも平成18年(2006)10月11日の官房長官発表で、「北朝鮮籍を有する者の入国は、特別の事情がない限り認めない。但し、在日の北朝鮮当局の職員以外の者の再入国は、この限りではない」と同年7月5日の制裁発表のディテールが再度明確にされている。
今年4月28日には朝鮮総連幹部3名が北京五輪の聖火リレーのランナーを務めるため平壌入りしたが、最高人民会議代議員でも北朝鮮の公務員でもない。しかし、5月に北朝鮮へ入国したとされるB氏は「在日の北朝鮮当局の職員以外の者」に該当せず再入国は許されない。
にもかかわらず、このような事態になっていたということは、外務省高官レベルでも関知できない、政府のトップレベルの判断で制裁措置が事実上解除されていたことを意味する。
今年の5月から北朝鮮側が万景峰号の入港手続きに入るなど、制裁解除を睨んだ動きを見せていたことにも呼応する動きだ。
高村外務大臣は、8月26日の閣議後の記者会見で、北朝鮮側から拉致問題を再調査するための「調査委員会」を設置したという連絡があれば、北朝鮮に対する制裁措置を一部解除するという政府の方針に変わりはないという認識を示している。この政府方針を真っ向から批判したのが、8月27日の拉致議連関係団体幹部連絡会だった。
解除は調査結果見極めてこれに対し、制裁緩和の方針は不変だと高村外相は8月29日に再度述べている。
日本と北朝鮮の実務者協議で合意された拉致問題の再調査について、拉致被害者の家族が超党派の議員連盟とともに会合を開き、「調査を開始した」という北朝鮮からの通報だけで制裁を解除するのではなく、調査結果をしっかり見極めるべきだとする考えで一致しました。
(NHK 8月28日 0時52分)
対北制裁緩和、方針は不変=高村外相これに先立つ1週間前には、北朝鮮入りした山崎拓氏が制裁解除を前提にした協議を北朝鮮当局と行っているとの情報がある。山崎氏の動きは福田政権の国民を欺いた北朝鮮融和策の別動隊に過ぎないのではないか。
高村正彦外相は29日午前の閣議後の記者会見で、北朝鮮の核施設無能力化中断に関し「(日朝関係に)悪い影響を及ぼさないよう努力していく」と述べた。その上で、拉致被害者の調査委員会が設置され、再調査開始が確認されれば「われわれも約束したことをやる」と述べ、経済制裁を一部解除する方針に変わりないことを明らかにした。
(時事 2008/08/29-11:47)
いずれにしても、平成18年7月5日に安倍政権下で執られた北朝鮮への制裁措置が国民どころか外務省高官もあずかり知らないレベルで、極秘裏に一部が解除されていたのは重大な問題である。
なお、北朝鮮最高人民会議代議員は日本では国会議員に当たり、6名の在日朝鮮人が選出されている。金正日独裁体制を支える北朝鮮の国家権力の最高会議を構成する人物が、在日朝鮮人として日本で生活をしているのだ。
この事実を知って驚く人がまだまだ多いのは、拉致問題が周知された平成14年(2002年)以降でも、いかにメディアの情報回路が偏っているかということだ。
9月1日の福田首相の辞任発表は非常に残念だった。なぜなら、この問題で徹底的に福田政権を追い詰めることが不可能になったからだ。しかし、それは福田首相の責任が問われないということでは決してない。毒餃子問題や東シナ海ガス田問題など、支那との怪しい密約説も含めて、徹底的に追及されるべきだ。
また、ポスト福田がどのような政権になろうとも、時代の流れに抗して歴史の針を10年以上巻き戻した福田政権の擬似政権になるなら、自民だろうか民主だろうが、国民は大きな声で「NO!」という意思を叩きつけなければならない。
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※日刊スポーツコムに連載していた「北京五輪の透視図」はここで。