さて、「めぐみへの誓い」。
一人でも多くの人に観てほしい戯曲だ。そんなことを書きながら、ここまでお知らせするのが遅れたことをお詫びする。本日の上演は2回あり、チケットもまだあるようなので、是非、興味のある方は足を運んでほしい。
演劇、映画を問わず、北朝鮮の強制収容所の過酷な状況をわが国で描いたのは「めぐみへの誓い」が初めてだ。第2幕冒頭の強制収容所を描いたシーンは、幻想的な中にあの国の宿痾と業が見事に表現されている。
家族会が結成され署名活動を始めた拉致被害者と支援者に、罵声と浴びせ妨害する人も現れる。詰め寄る支援者と歴史論争になるが、強制連行や従軍慰安婦の嘘も舞台の上で暴かれる。署名活動に「差別だ!」と言い寄る人に、丁寧に歴史事実を支援者が教えるシーンも、これまで見られなかった一歩踏み込んだ台本になっている。野伏氏の演出も見事で、「俺は、君のためにこそ死ににいく」同様、音楽の使い方がいい。
大人になっためぐみさんを演じた木村彩花は早稲田の1年生だが、光っている。横田滋さん、早紀江さんを演じた小野寺昭と石村とも子、田口八重子さんを演じた川上麻衣子もベテランらしい味を発揮している。
この戯曲の素晴らしさは、めぐみさん失踪や田口八重子さんの拉致、大韓航空機爆破テロなどの事件を事実関係の一つひとつを膨大な文献や証言から可能な限り事実を積み上げていることである。つまり、ディテールが事実によって構築されている。北朝鮮の収容所、招待所、工作船の場面だけが「事実」を類推して描かれているが、それ以外はノンフィクションと言っても過言でもないのである。
初日公開前の記者会見で、石村とも子さんは「横田早紀江さんのニュース映像を何度も見たし、実際にお会いし早紀江さんの話し方など真似ようとしたけれどそれはやめました」と言った。「私自身の身に降りかかった問題として自分なりに演じた方がいいと思った」からだ。田口八重子さん役の川上麻衣子が金賢姫と話をした後、「子供に会いたい!」と叫ぶシーンがあるが、八重子さんの子供である飯塚耕一郎さんは初日に舞台を見た後「あの場面は辛かった」と語ってくれた。
9・17の記者会見のシーンがある。横田滋さんが言葉につまり、早紀江さんが心をしぼるように後を継いで語った有名な言葉も、歴史事実のまま。舞台で再現される。無能な外務省の姿も容赦なく事実のまま描かれる。北朝鮮への怒りを忘れた拉致発覚8年後の日本人だからこそ、総理大臣と与党大幹部の犯罪を赦しているのだろうか?
劇団夜想会公演『めぐみへの誓い』
1月26日から1月31日まで 紀伊国屋サザンシアター
横田滋 小野寺昭
横田早起江 石村とも子
田口八重子 川上麻衣子
ほか
演出 野伏 翔
プロデュース 佐々木俊夫
夜の部(1830)〜 1月26日-30日
昼の部(1400)〜 1月29日―31日(29,30は昼夜)
入場料 前売り5000円、当日5500円、学生3000円。
産経ニュース
テレビ朝日
すっかりこのお芝居のことを忘れていましたが、今日の夜の部に観劇に行くことにしました。情報ありがとうございます。